Ep-01「馴染んだ世界」
#小説最高ランク : 16 , 更新:
※注意※
この小説は上海アリス幻樂団様が制作する東方Projectの二次創作作品です。間違ってもこれを原作、等勘違いしないで下さい。
「___どこだよ、ここ。」
「帰れない?一体何言って___」
「……どうして、こうなったんだよ。」
「ゲームもネットもないし。……退屈だ。やりたいこと沢山あったのに……」
「……どうして___」
……あの時、何故俺は。この世界にやってきたのか。
今でもそれは分からない。昔来た事あるような気もしたが、そんな記憶はアテにならない。
……何故俺は……
「……ちょっと時雨。聞いてる?」
ふと、そんな声が耳に入り正気に戻った。
そのまま辺りを少し見回してみる。西洋風の造りの部屋。部屋に置いてある大量の人形。木造のダイニングテーブルと椅子、そして机の上に乗せられた魔道書。……そして向かいの椅子に座っている俺に話しかけてきた少女。
青のワンピースのようなノースリーブに、ロングスカート。
その肩にケープのようなものを羽織り、頭にはヘアバンドのような赤いリボンを巻いている。ウェーブのかかった短い金髪に、黄色の瞳を見て。誰だか私はすぐに思い出した。
「んぇ?……アリスさん……俺何してました?」
「ずーっと目を開いたままボーッとしてたわよ。貴方多分目を開けたまま寝てたでしょう。」
「……かも知れないですねぇ……」
呆れたように俺に話しかけるアリスさんに苦笑を向けた。
……魔法の森。幻想郷で最も湿度が高く、人間が足を踏み入れる事が少ない原生林。森の中は地面まで日光が殆ど届かず、暗くじめじめしている。故に茸が際限なく育っている。
そんな森を暫く進んだ先に、多少日光がマシに届く所がある。そこに存在する一つの家。そこが今私の住まわせてもらっている場所だ。
そしてその家に住んでいるのが、この家の主であるアリス・マーガトロイドさんである。
魔法使いにして人形師であり、人形作りが得意で、大量の人形を魔法で同時に操ることができる。その器用さは幻想郷でも随一と言われている程。
そんな彼女の家に居候しているのが私の現状なのだ。
……なぜ居候しているのか。それは簡単な話である。住む場所がないから。だって仕方ないじゃん。住める家が見つかってないんだもの。しかも数年。
だからアリスさんの優しさを頼らせてもらい、長い間住まわせてもらっているのである。
「……そんなに私の魔法の話は退屈だったかしら?」
「……そりゃ、私の魔法は七色でも五行でもないですから。独自に開発した魔法を自由気ままに使うのが私ですので。」
「貴方ねぇ……自分で魔法を作って使うって、かなり高度な事なのよ?それを私に魔法を教わって3年位で習得してしまうって、普通は出来ないわ。私だってもっと長い時間をかけて魔法使いになったのだから。」
「そうは言っても俺はまだ種族としての魔法使いじゃあないですからね。職業として魔法使い名乗ってるみたいな物ですし。」
「……それに囚われなければ、私を超える逸材になるのかもしれないのに。」
「それで悲しくなるのは貴方でしょ。」
「何言ってるのかしら。貴方に先を行かれたら、プライドにかけて貴方を越すのが私よ。」
……どこか自信ありげにアリスさんは笑みを浮かべる。それに対して私は口元だけを緩ませて、開きっぱなしにしていたグリモワールを閉じた。
「……話を聞く気は失せた?」
「失せたわけじゃないですけどね。私もアリスさんみたいに極めようかなと。」
「……さっきの私に対する皮肉かなにかかしら。」
「そんなもんじゃありませんよ。アリスさんが人形に拘るように、俺も自分の創作魔術に拘るだけです。」
それから一度椅子から立ち上がり軽く体を伸ばす仕草を見せた。そしてテーブルの上の魔導書を片手に持てば、アリスさんは私の方を見てきた。
「……どこか行くの?」
「えぇ。どうせなら森の外に散歩にでも、と思って。」
「……まぁそういうのも悪くないかしら。私も着いて行って良いわよね?どうせなら人里に食糧品を買いにも行きたいから。」
「いいですよ。護衛は私にお任せ下さい。」
「護衛されるほど弱くもないわ。勝てない相手は避けるだけよ。」
笑みを浮かべつつ、アリスさんは人形達に軽く部屋の片付けをさせてから、本を脇に抱えて俺と一緒に外に出る準備を終わらせる。正直俺は魔導書を持たなくたっていいので、自分の寝床の上に魔導書を置いてから靴を履いた。
それから2人で玄関口の外に出て、軽く外の空気を吸う。やはり森の空気は家の中より多少悪い。瘴気はどうにでもなるが、ジメッとしていて息がしずらい。さっさと抜けてしまいたいところだ。
それからアリスさんと暫く道に沿って森の中を歩き続ける。その間に話す事は特に無いので、お互いに黙ったままではある。
そんな中だがアリスさんに少し聞きたいことがあったのを思い出して、私は口を開いた。
「……あぁそういえばアリスさん。なんで俺の事家に泊めてくれてるんですか?しかも結構長い間。……ご飯とか大変だったでしょ。」
「……ん、そんな話?まぁそうね……別に住まわせてもいいんじゃないかなと思っただけよ。貴方、幻想入りして身寄りもないみたいだし。誰かが拾ってあげないと可哀想だって思っただけ。」
「……の割には最初の方無口でしたよね。私に対して。」
「そりゃああまり興味なかったもの。あくまで作業みたいな物だったわ。貴方を家に泊めるのは。……魔法に興味を持ったのは想定外だったけど」
「……まぁどうせ外の世界に帰れませんでしたし。やることも無かったので、魔法とかにも当たり前に興味は出てきますよ。」
「まぁそれもそうね。守谷の現人神だって、最初は外の世界の生活が恋しかったらしいけど、すっかり馴染んでしまったらしいから。」
「そういう訳ですよ。……今更ながらありがとうございますね。俺の事家に住まわせてくれて」
「どういたしまして。……そろそろ独り立ちしなさいよ。」
「わかってますって。人里にいい感じの家が見つかったら、そこに住みますよ。」
……そんな他愛もない話をしているうちに、森の出入口に着いていた。香霖堂は既に通り越したのだろうか。話すのに夢中になってしまってあまり覚えていない。
「いつの間にか森の外ですね……どうします?」
「まぁ時雨に任せようかしら。人里は後回しでいいからね。」
「じゃあ神社にでも行きましょうか。霊夢さんにお茶用意させましょう。面倒臭がるだろうなぁきっと……」
「……性格の悪さも一級品ね。」
「流石に冗談なんですけど……?」
なんて苦笑を浮かべ続けながら、私達は博麗神社へと向かう事にした。
……この先始まるのんびりな日常を、私はまだ知らない。
あとがき
どうも。クロノ君です。こういうのは出来るだけ占いツクールに出したい物ですけど、まぁ占ツクはここより治安が悪いのでもう諦めます。
さぁ始まりましたよ小説。みんな興味無いだろうけど面白いかどうかはさておき私のクソみたいな文才を評価してくれたら有難いなと思います。では。
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