【小説】君に恋した夏休み(本編+後日談再録)

#白銀の狙撃手 小説 #君に恋した夏休み」
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最高ランク : 22 , 更新: 2022/09/27 2:41:42


(日の目を浴びたようで浴びなかった長編単発の再録です。
文法もくそもない(今もだけど)作品をお楽しみください)



夏休み。
ある事情で俺は実家に帰っていた。
ただインターネットもない実家ではやることもなく、
小学生6年生の俺はただただ外で虫取りをして遊んでた。
そんなある日、実家に来て一週間後、
「ねぇ、何してるの?」
いつも通りセミを取ろうとしていると、
ある少女に話しかけられビクッと体が跳ねる。
後ろを振り向くと、特徴的な帽子に黄緑色の髪の毛。
「...何って、虫取りだけど」
「虫取り!?私もやりたい!」
彼女が騒ぐと、セミが飛んでいってしまった。
「あっ!セミぃ!待てやこらぁ!」
「あーあ。飛んでっちゃった...」
「お前が騒いだからなんだけど?てか誰だよ」
「私?私は古明地こいし!あなたの名前は?」
「俺か?俺は海野祐希(ウミノユウキ)って名前だよ」
真夏の8月。午前。
これがこの少女...
...古明地こいしとの出会いだった。


※ ※ ※ ※ ※


「あなたってどこから来たの?」
「関東から4時間くらいかけてこっちに来た。夏休みの間。親が用事で九州にいかなくちゃ行けなくなったから」
「大変だね~」
「まぁ慣れたけどもね」
セミを逃がした俺は、コンビニで適当にアイスを買いながらこいしとしゃべっていた。
「そう言うこいしさんはこの辺りの子供なの?」
「うん!ここに何年も住んでるかな~」
「へぇ~...友達とかは?」
「いないよ?」
「え?」
一瞬、嘘だろと思った。
友達が居ない?そんなわけあるか。公園にだって子供はいた。ここの近くに小学校もある。なのに何で______
「お姉ちゃんが死んじゃってから、学校にいく気力がなくなっちゃった」
思ったより重たい話だった。(ダジャレじゃないよ)
彼女には古明地さとりという姉が居たらしいが、二年前に交通事故で死亡。随一のお姉ちゃんっ子だったこいしは、ショックで何もかもどうでもよくなってしまったらしい。勉強は家庭教師に平日の間見てもらってると言っていた。
「...。」
正直、かける言葉がなかった。
俺には兄も姉も居ない一人っ子だったから、寂しさを埋める方法は知ってる。ただその事を考えず、別のことに熱中してればいい。勉強だったり、ゲームだったり、テレビだったり、運動だったり。
でも、こいしにはそれが可愛そうに感じた。
「...わかるよ。何もかもどうでもよくなる気持ち。大切な物が消えてしまう喪失感。」
俺はそう答えた。
昔犬を飼っていたことがある。その犬をどんなものよりも大切にしていた。
でも、去年寿命で死んだ。ショックだった。一晩中泣いた。
だからこそわかる。大切な物が無くなる気持ちと言うのは。
「ありがとう。理解してくれて」
俺の一言に、彼女は静かにそう答えた。
響き渡る。セミの声にかきけされながら。


※ ※ ※ ※ ※


「今日も虫取りー!」
「今日こそはクマゼミを捕まえる....!」
決意に燃えた俺と、好奇心旺盛なこいし。
二人揃って公園で虫取りをした。
めちゃくちゃ長く虫取りをした気がする。
俺は念願のクマゼミを捕まえたし、
こいしもこいしでかなりの虫を見つけていた。
...見つけただけだが。
しかし、こうも暑いとやる気も無くなってくる。
俺は一人木陰のベンチにてばあちゃんにつくってもらったおにぎりを昼飯に食べていた。
「何それ?おにぎり?」
こいしは俺の隣に座って訪ねてくる。
「そそ。でもばあちゃんの作るおにぎり正直一個でお腹一杯」
そう、ばあちゃんのおにぎりはとにかくデカイ。
お椀に入ったご飯一杯分はあるから余裕で腹がふくれるのだ。
しかもそれが二個あると言う地獄。
「じゃあ私に頂戴!」
「いいよ」
ひょいと二個目のおにぎりを渡すとこいしはすぐに平らげた。
「...お前って結構大食い?「
「そんなことないよ?虫取りしてて疲れたからじゃない?」
笑いつつも彼女は答えた。
...なんか、こういう生活も飽きないな。
俺は一人そう思っていた。


※ ※ ※ ※ ※


あれからひたすら虫取りしてたら宿題が終わらないので3日くらい家に籠って宿題全部終わらせた。
それから3日ぶりに公園に行くと、こいしは居なかった。
...まあ、当然か。3日も開けてれば。
そう思って俺は一人虫取りを続けた。
...でも次の日も、そのまた次の日も。彼女は居なかった。
どうしてだろうと思いつつも、俺は一人で虫取りをしていた。
ある雨の日だった。
コンビニで適当にお菓子を買って帰ろうとして、公園の横を通り過ぎる。
ちらっと公園を見ると、こいしが傘もささずに立っていた。
「どうした!?」
焦ってこいしに駆け寄り、傘の中に入れる。
「...え?祐希?」
「え?じゃねえよ。こんな雨の中傘もささずに何やってるんだよ。風邪引くぞ」
「...ごめん。祐希がてっきりいなくなっちゃったかなって...」
「はぁ?」
とりあえず俺はこいしを家に送り届けながら、話を聞いた。
虫取りした次の日、俺が居なかったからもう元の家に帰ったのかな、と思ったらしく、
それからはひたすら家に籠っていたらしい。
今日はなんだか気分がむしゃくしゃして傘もささずに勢いで飛び出してしまったそうだ。
「...なんかごめんな?」
「別にいいよ!私が勘違いしてただけみたいだから!」
彼女はさっきの様子と違ってめちゃくちゃ明るかった。
「...なんか、さっきと様子が全然違うんだけど?」
「だってまだ祐希君がいるってわかって嬉しいんだもん!ヘクチッ...」
なんか可愛い嚔をした。
「やっぱり風邪引くから早く行こうな」
「うん!ヘクチッ...」
そう言って、俺はこいしの手を引っ張りながらこいし宅に向かった。


※ ※ ※ ※ ※


「...。」
口開きっぱなしだった。
あのあとこいしの家に来てみればまぁびっくり。豪邸でした。
家庭教師平日毎日雇えるくらいなら確かに納得は行く。
そのまま俺は客人扱いで家に招き入れてもらった。
因みにこいしはお風呂にいるらしい。
俺は玄関にてただつったっていた。
「ごめんなさいね。わざわざ送ってきてくれて」
「いえいえ...大丈夫です」
話しかけて来たのはこいしの母親だった。
「立ち話も何だから上がってくれないかしら?おもてなしくらいはさせてほしくて...」
「大丈夫ですって。俺そう言うの合わないので」
「そう?なら図々しいかも知れないけど、一つお願いしていいかしら?」
「大丈夫ですよ?何ですか?」
「あの子の事...よろしくね」
母親は嬉しそうに語る。
「あの子ったらさとりが居なくなってからずっと暗かったのにここ最近あなたの事を楽しそうに話してるの。あの子にとって、あなたはきっと大切な存在になってるんだと思うわ」
「...。」
俺はただ静かに聞いていた。
こいしはきっと、寂しかったのだろう。
公園で遊んでいる子供たちはもう一つのグループでできていてこいしが入る隙間などない。
そんななか俺が一人で虫取をしているのが目に入り、声をかけてきたのだと言うのは簡単に予想できた。
だからこそ俺は。
「...わかりました。任せてください」
そう答えて、俺は古明地宅を後にした。


※ ※ ※ ※ ※


「...夏祭り?」
「そそ。あんた最近この辺りの子で友達出来たんでしょ?」
あの雨の日の出来事から4日後。
自宅の玄関にてばあちゃんとそんな話をしていた。
「明日は夏祭りの日だし、花火大会もあるからその子といっておいで。小遣いならあげるから」
「急だね。案外」
「言ったの今日だからね」
そんな会話をしつつも、俺はばあちゃんに聞いた。
「なぁ、どうして俺に友達が出来たってわかったの?」
するとばあちゃんは。
「なにいってんだ。あんたここ最近少しだけ帰るの遅いだろ。なんかある証拠だ。あとは勘だよ。」
そう答えた。勘でわかるってすげぇな。
「そのお友達大切にしてやんな。夏休みだけの関係だ。最後まできっちり楽しく過ごしな」
「...ありがとばあちゃん。行ってきます。」
そう言って俺は家を出た。

「あ!遅い!」
「ごめんって...」
苦笑いしつつも俺は謝る。今日もまた、二人で虫取の時間だ。
風邪の治ったこいしもさすがに虫の取り方がわかったようで、ここ最近はめっちゃたくさんとってる。
「あ!そうだ!」
こいしは言った。
「明日夏祭りあるんだけど一緒に行かない?」
「あぁ。行くよ」
俺は即答。最初から答えは決まっていた。
「本当に!やったぁ!」
まるで子供見たいに跳び跳ねるこいし。いや子供だけども。
俺はそんな姿をみて少しだけ微笑んだ。
ばあちゃんには後で感謝だな_______
そんなことを思いながら。


※ ※ ※ ※ ※


夏祭り当日。会場にて。
屋台が出揃っている町は人で賑わっていた。
「わー!いつ来てもすごい人の数ー!」
浴衣姿のこいしはそう言った。
「前も来てるの?」
「うん!毎年来てたよー?」
「へぇー...」
毎年これやってるんなら相当楽しそうだな。
俺はそう思いながら二人で屋台をめぐった。
正直、楽しかった。
ヨーヨー釣りとか射的とか、あんまりやったことなかったから新鮮だった。くじは引かなかった。闇だから。
そんで一通り回ったころ、放送が聞こえてきた。
間もなく、花火大会を開催いたします。
花火の始まる合図だ。最初の放送だから後30分は時間がある。
「...こいし、花火大会ど、う、す...る.........。」
こいしはそこには居なかった。
辺りを見渡す、目に見える範囲には居なかった。取り敢えず俺を中心にこいしが立っていた方角に走った。
「こいしー?」
所々でそう呼び掛けながら俺はこいしを探す。
「...あ」
見つけた。でもあれは...
「ねぇねぇ君一人?親御さんは?」
「え?...実は友達とはぐれちゃって...」
「じゃあおじさんがそのお友達のところまでつれていってあげるよ」
誘拐現場ってここまで堂々と行われる物なんだね。
そう思いながら俺はこいしに近づく。
「本当に?じゃお願いします!」
こいしって本当に疑うことを知らねぇなぁ!?
「じゃ、行こうか」
そう言ってこいしの手を握ろうとした男の腕を俺が横からつかみあげる。
「あ!祐希!この人です!友達って!」
「え?そうなの?てか君、なに腕つかんで...」

「ここは祭りの会場だ。誘拐犯が来る場所じゃねぇ」

男の耳元で俺はそう呟いた。
「なっ...」
「俺がここでこいつ誘拐犯でーすって叫んだらどうなる?あんた普通に捕まるぜ?俺だってみてるんだからな」
「...チッ」
男は舌打ちすると腕を振り切ってどこかに行った。
「どうしたの?あの男の人?」
「気にしないのが正解。それより花火の場所...」
「あ!それなら私いい穴場知ってるよ!ついてきて!」
「え"!?ちょっと!?」
こいしは俺の手を掴んで走り出した。切り替え早いなおい。
そう思いながら、俺はこいしについていった


※ ※ ※ ※ ※


「ここ!」
「ここ?」
たどり着いたのは神社だった。こいしはそこの隣にあるベンチに座ると、お前もこいと言わんばかりに手招きする。
俺は大人しく座った。
「ここが穴場なの?」
「うん!穴場!」
こいしは自信満々にそう答えた。
あと五分くらい時間がある。
「...私ね、お姉ちゃんが居なくなってからずっと一人だったんだ」
急にこいしが自分語りを始めた。
「急だな?」
「いいじゃん別に!...それでね。たまたま公園に行ったらあなたがいたの」
こいしは語る。
「回りと違って一人で虫取をしてるあなたを見たら、私と似てる気がしたの。そして話しかけたらびっくり!すごい面白い人じゃん!ってなって」
「...。」
「それでね。今まで全然楽しくなかったのがものすごく楽しくなったんだ。心の底から何かが引っくり返った気分。それもこれもあなたに出会えたおかげなの!」
「...俺はそんな立派なやつじゃないよ」
苦笑いしつつ俺は答える。
「そんなことないよ。祐希は私の我儘を聞いてくれた。付き合ってくれた。遊んでくれた。それだけでも、十分私は嬉しかったの。」
そして、こいしは最後の一言を俺にささやく。
「だからね!私はあなたの事が________」
大事な部分で花火がうち上がるお決まりの展開。
でも、俺は何て言ってるのかはっきり聞こえた。
こいしは少し頬を染めつつ笑っていた。
花火の光が、俺たちを照らす。というか凄い良く花火見える。
そして俺はそんなことを考えるのを後回しにして、こいしに対してどんな返事をしようか考えていた。
そして悩んで悩んで悩んだ末、見つけた答え。
「...俺は、そんな凄い人間じゃないけどさ、お前と毎日虫取りをしてて、思ったんだ。「ああ楽しいな」って」
俺は少し間を開けていった。
「俺もだよ。今まで出会ってきた人のなかで、一番一緒にいて楽しかった」
そう言うとこいしは目を見開いて、嬉しそうな顔をすると、
「やったぁ!」
と叫んで俺に抱きついた。
その瞬間、やけに花火の光が輝いて見えたのは気のせいだったのだろうか。


※ ※ ※ ※ ※


「本当に行っちゃうの?」
「まぁ...そう言う話だしな」
夏休み終了一日前、俺はこいしと公園で話していた。
明日で夏休みは終わり。俺の親も九州から帰ってきたから、俺も家に帰らないといけないのだ。
少し残念だが、仕方ない。そう思っていると、
「また会えるよね...?」
こいしが不安げに聞いてきた。
「...きっと会えるよ。絶対」
俺はそう返した。
時間を見る。そろそろ親が実家を出ると言う時間帯だった。
「...俺、そろそろ帰らなきゃ」
「うん。」
俺は、去り際にこういい放つ。
「...絶対いつか戻って来るから!会いに来るから!それまで!それまで待ってろよ!」
こいしを指差して俺は言った。
「...うん!」
最後に笑って彼女は言った。
どれだけ離れても、思いが一緒なら、またきっといつか会える。
俺は少なからずそう信じてる。
きっと大丈夫。必ず俺はこいしに会いに行く。
何故ならば俺は。
彼女が好きだから。


後日談____


...こいしと出会ってから、三年がたった。
連絡など全く取り合っていないから、お互いどうなってるか分からない。
でも、きっとまた会えるから、いまはそれでいいと思った。
「...しゃあ!」
俺は高校の合格発表に来ていた。結果は見事合格。超絶嬉しかった、
...そして俺は、ある約束を叶えに来た。
自宅から電車で2時間。
母方の実家に俺は帰ってきた。
それは、ある人物に会うため。
俺は少し歩いた先にあるでかい家にピンポンを鳴らした。
「はい!古明地です!」
「どうも~...海野祐希と申します...」
「...」
インターホン越しに出てきた相手に自分の名前を告げると、声が聞こえなくなった。
家の方からドタドタと足音が聞こえる。
玄関が開いたかと思えば、黄緑色の髪をもつ懐かしい少女の姿がそこにはあった。
「祐希ー!」
「おわっ...久しいのはいいけどスキンシップ...」
古明地こいしが出てきたかと思えば、いきなり俺に抱きつきてきた。
小学六年生のころより少し身長も伸びている
「だって寂しかったんだもーん!」
頬を膨らませてこっちを睨んでくる。今はあとにしてほしい。
「...それより、中学から学校行けたんだっけか?」
「うん!行けたよ!」
そう、こいしは中学にちゃんと通えていたのだ。
俺と出会ってからこいしも色々変わったらしい。
そして、こいしが言うには。
「私何か美形?らしくて回りのみんなにたくさん告白されたの!」
険しい表情をしながらこいしはいってきた。
「あはは...仕方ないんじゃない?」
「仕方なくないよ!祐希くんのために全員フるの結構辛かったんだよ!?」
「あはは...」
俺は苦笑いするしかなかった。
「高校には受かったのか?」
「うん!受かったよ!篠田高校?ってところ!」
「え!?俺と一緒じゃん!」
「そうなの!?」
偶然の奇跡と言うかなんと言うか、
たまたま俺たち二人は同じ高校に入っていた。
「じゃあこれから沢山イチャイチャできるね!」
「気が早いよ...」
また苦笑いしてしまった。


※ ※ ※ ※ ※


あれから、お互いの思い出について語っていた。
体育祭は何をしたか、
音楽祭とかはあったのか。
修学旅行はどこにいったのか。
色々話していた。
思いでの公園にて、俺たち二人はベンチに座っていた。
夕焼けぞらが俺たちを照らす。
そしてこいしが最後に告げる。
「それじゃ、あのときの続きだね」
あの時...とはいつの時か、俺には容易にわかってしまった。
「祐希。大好きです。付き合ってください」
彼女は笑顔でそういった。
俺は、これにどう返すか悩んでいた。
彼女を幸せにする自信なんて、ない。
でも、俺は彼女と...こいしと一緒にいたい。
だから、決めた。
これが俺の答え。
「...よろしくお願いします」
そういった瞬間、パァァァと彼女の顔が明るくなった。
嬉しそうに俺に抱きついてきた。
俺はそんな彼女の顔を優しく触り、自分の顔が見えるように角度を調整する。
...ここからが、本当の始まり、
付き合ったから幸せじゃない。付き合いはじめてからこそ、本当の物語なのだ。
俺はその日、ファーストキスを彼女に捧げた。

sirogane0730


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みむふろ
2022/09/27 5:09:59 違反報告 リンク